食育は「全部食べること」だけではない|保育園栄養士として思うこと

子どもに伝えたい食育

子どもが食事を残したり、苦手な食べ物に手をつけなかったりすると、
「このままで大丈夫かな」と心配になることがありますよね。

でも、食育は「全部食べること」だけで決まるものではありません。
食べ物を見る、触る、においをかぐ、友だちが食べる姿を見ることも、子どもにとっては大切な食の経験です。

この記事では、保育園栄養士として感じている「完食だけではない食育」の考え方を、家庭でも少し気持ちが軽くなるようにまとめます。

食育は「全部食べること」だけではない

子どもが食事を残したり、苦手な食べ物に手をつけなかったりすると、保護者としては少し心配になりますよね。

「また食べなかった」
「このままで大丈夫かな」
「ちゃんと食育できていないのかな」

そんなふうに感じることもあると思います。

でも、食育は「全部食べること」だけではありません。

もちろん、食べることは大切です。
体をつくるためにも、いろいろな食材に慣れていくためにも、食べる経験は欠かせません。

ただ、子どもにとっての食育は、完食だけで決まるものではないんですよね。

食べ物を見る。
触ってみる。
においをかぐ。
少しだけ口に近づけてみる。
友だちが食べる姿を見る。

こうしたことも、子どもにとっては食べ物と出会う大切な経験です。

食べ物を見る・触れることも大切な経験

大人から見ると、「食べたか、食べなかったか」はとても分かりやすい結果です。

でも、子どもの中では、食べる前にもいろいろなことが起きています。

初めて見る野菜をじっと見る。
においをかいで、少し顔をしかめる。
指でつついてみる。
友だちのお皿を見て、「これ何?」と聞く。

その時点では食べていなくても、子どもは食べ物のことを感じています。

特に苦手な食材や初めての食材は、いきなり口に入れることが難しい子もいます。
大人でも、知らない食べ物を急に「食べて」と言われたら、少し構えてしまうことがありますよね。

子どもにとっては、見るだけでも、触るだけでも、「この食べ物は何だろう」と知る入り口になります。

食べる前の経験も、ちゃんと積み重なっている。
ここは、家庭でも保育の場でも大切にしたいところです。

野菜を見たり触ったりする子どもを栄養士くまさんが見守るイラスト

保育園でも、すぐに食べられる子ばかりではない

保育園でも、初めて出る食材や苦手な料理を、すぐに食べられる子ばかりではありません。

どちらかといえば、食べられない子のほうが多い食材もたくさんあります。

最初はお皿にあるだけで嫌がる子もいます。
見ただけで「いらない」と言う子もいます。
においで苦手だと感じる子もいます。

でも、何度か給食で出てきたり、先生や友だちが食べている姿を見たりするうちに、少しずつ反応が変わることがあります。

ある日、急に食べるようになるというより、
「今日は見ていた」
「今日は触ってみた」
「今日は少しだけなめてみた」
「今日はひと口だけ食べた」
というように、小さな段階を通っていることが多いです。

保育園では、友だちの存在も大きいです。

隣の子が食べているのを見て、気になって手を伸ばす。
先生が「これはシャキシャキするね」と話しているのを聞く。
給食に何度も出てくるうちに、見慣れてくる。

そういう時間の中で、少しずつ食べ物との距離が近くなっていくことがあります。

日々の給食の中で、大人がすぐには気づけない変化が、子どもたちの中では少しずつ起きているのだと思います。

そんな変化に気づけるようになりたいですね。

全部食べることだけを目標にすると、食事がつらくなることも

食事の時間は、栄養をとる時間でもありますが、安心して食べ物と向き合う時間でもあります。

もちろん、毎日まったく食べない、体調や成長が心配という場合は、家庭だけで抱えずに園や専門家に相談することも大切です。

ただ、毎回の食事で「全部食べること」だけを目標にしてしまうと、子どもにとっても大人にとっても、食事の時間がつらくなることがあります。

「食べなさい」
「あとひと口」
「残さないで」

そう言いたくなる場面は、家庭でも保育現場でもあります。

でも、子どもが緊張したり、怒られる時間だと感じたりすると、苦手な食材への気持ちがさらに強くなることもあります。

食べることは、本来、安心できる場面の中で少しずつ広がっていくものだと感じています。

完食できたかどうかだけでなく、
今日は食卓に座れたか。
食べ物を見られたか。
少し触れたか。
前より嫌がり方が小さくなったか。

そういう小さな変化も、食育の中では大事にしていいと思います。

私も経験が浅い頃は、「みんなに完食してほしい」「楽しく食べてほしい」という気持ちが強くなりすぎて、子どもたちの気持ちを十分に見られていなかったなと感じることがあります。

「これなら食べられるかな」「この出し方なら大丈夫かな」と考えても、思うようにいかないこともありました。

その経験があるからこそ、今は食べたかどうかだけでなく、見られたこと、触れたこと、少しでも興味を持てたことも大切にしたいと思っています。

保育士の先生方も、保護者の方も、きっと同じように悩む場面があると思います。
だからこそ、子どもの気持ちにも、大人の悩みにも、どちらにも寄り添えるようにしていきたいです。

「食べなくていい」で終わらせない関わり方

ここで気をつけたいのは、「食育は全部食べることだけではない」からといって、「食べなくていい」で終わらせることではありません。

子どもが嫌がるものを無理に食べさせる必要はありません。
でも、食べ物との出会いをなくしてしまうのも、少しもったいないと感じます。

たとえば、苦手な野菜があるなら、

「今日は見るだけでもいいよ」
「どんなにおいがするかな」
「切ると中はどんな形かな」
「お皿に少しだけのせてみようか」
「友だちはどんなふうに食べているかな」

このくらいの関わり方でも、食べ物との距離は少しずつ近づきます。

無理に口へ運ばせるのではなく、安心して出会える形をつくる。
それも食育のひとつだと思います。

アレルギーや体調、発達段階によって、食べ方や関わり方に配慮が必要な場合もあります。
その子に合った進め方を大切にしながら、「食べる・食べない」だけで判断しすぎないことが大事です。

家庭でできる小さな食育

保護者の方からも、「家では全然食べないんです」と聞くことがあります。

無理に頑張ろうとしなくて大丈夫ですよ。

保育園でも、家庭での様子やその日の体調を聞きながら、量を少なめにしたり、食べやすい大きさにしたりすることがあります。

だからといって、「保育園でやっているから家庭でも同じようにしなきゃ」と、義務のように感じなくても大丈夫です。

家庭での食育は、特別なことをしなくても大丈夫です。

毎日、栄養の話をしなくてもいいですし、完璧な献立を用意し続ける必要もありません。

たとえば、スーパーで野菜を見ながら、
「このきゅうり、長いね」
「オクラを切ると星みたいな形になるんだよ」
「このにんじん、色がきれいだね」

そんな会話でも、子どもにとっては食べ物に興味を持つきっかけになります。

料理の手伝いも、無理に包丁を使わなくて大丈夫です。

レタスをちぎる。
トマトを洗う。
きのこをほぐす。
お皿に並べる。

こうした小さな関わりも、食べ物を身近に感じる経験になります。

食べられなかった日があっても、食卓に出てきたこと、見たこと、触ったこと、会話に出たことは、子どもの中に少しずつ残っていきます。

家庭では、そのくらいの長い目で見てもいいのではないかと思います。

親子で野菜に触れながら家庭で小さな食育を楽しむイラスト

食育の本を読むなら、考え方に寄り添うものを

子どもの食事や好き嫌いに悩むとき、本を参考にするのもひとつの方法です。

ただ、選ぶなら「これをすれば必ず食べるようになる」と強く言い切るものより、子どもの発達や気持ち、食べ物との出会い方に寄り添っている本が使いやすいと思います。

偏食や好き嫌いの本、食育の考え方が分かる本、親子で食べ物に興味を持てる絵本などは、家庭での声かけを考えるきっかけになります。

実際に本を紹介する場合も、「この本を読めば解決します」というより、保護者が少し気持ちを軽くしたり、子どもへの関わり方を考えたりするための候補として置くくらいが自然です。

このブログでも、本を紹介するときは、売り込みではなく、家庭で少し話しやすくなるものとして扱っていきたいと思っています。

保育園栄養士として思うこと

保育園で子どもたちを見ていると、食べられるようになるまでの道のりは本当にそれぞれだと感じます。

食べてもらいたい気持ちが先行しすぎて、子どものことを思ってのことも時に周りが見えなくなることもあります。

そんな時は落ち着いて、ほんの少しの変化でもプラスにとらえられるようにすると、気持ちが楽になると思います。

すぐに食べる子もいれば、何度も見て、何度も避けて、ある日少しだけ口にする子もいます。

大人から見ると「まだ食べない」と感じる時期でも、子どもの中では少しずつ経験が積み重なっていることがあります。

食べ物を見慣れる。
友だちが食べる姿を見る。
先生や家族が楽しそうに話しているのを聞く。
少しだけ触ってみる。

そうした時間も、食育の一部です。とても大事なことですよね。

全部食べることを目標にしすぎると、食事の時間が苦しいものになってしまうことがあります。

でも、食べ物に安心して出会える時間を積み重ねていくと、すぐに結果が出なくても、少しずつ変わっていくことがあります。

食育は、完食の丸をつけることだけではありません。

子どもが食べ物とどう出会い、どう感じ、どう少しずつ近づいていくか。
そこを見守ることも、大切な食育だと思っています。

まとめ

食育は、「全部食べること」だけではありません。

食べ物を見ること、触れること、においをかぐこと、少し試してみること、友だちが食べる姿を見ることも、子どもにとっては大切な経験です。

大切なのは、「食べなくていい」と投げてしまうことではなく、無理強いせず、安心して食べ物に出会える機会をつくること。

食べられない日があっても、その時間が何もなかったわけではありません。

今日見たこと。
少し触ったこと。
「これ何?」と聞いたこと。
食卓に並んでいたこと。

そういう小さな経験が、少しずつ子どもの食の土台になっていくのだと思います。

家庭でも保育園でも、完食だけにこだわりすぎず、少し長い目で食べ物との出会いを見ていけるといいですね。

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